そのルール大丈夫ですか?~従業員への罰金ルール~
2024年4月25日
「遅刻をすると罰金〇〇〇円」や「会社に損害を与えた際は損害額に関わらず〇〇〇万円の賠償金を払うこと」など、見聞きしたことがある方もいるかもしれません。
ですが、労働基準法第16条では、契約の不履行による違約金や損害に対する賠償金の規定を労使間で定めてはならないとしています。これを「賠償予定の禁止」といいます。
今回はそんな「賠償予定の禁止」についてお話していきます。
【目次】
・賠償予定の禁止とは?
・労働者に賠償請求はできないの?
・損害賠償請求に関する参考判例
・労働基準法第16条に違反した場合の罰則は?
・罰金はダメだが、懲戒処分としての減給は可能
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・賠償予定の禁止とは?
「賠償予定の禁止」は労働者の退職の自由を保証することがその目的です。
使用者は違約金によって労働者に対して労使関係を強要してはなりません。
・労働者に賠償請求はできないの?
労働基準法第16条は、労働者に対する賠償金の請求を全面的に禁止するものではありません。
禁止されるのは一定の金額の賠償をあらかじめ規定しておくことです。
例えば労働者が社用車で事故を起こした場合、法的な手続きを取れば労働者に修理代を請求することは可能です。しかし、労使契約の中で「事故を起こした場合は損害額に関わらず10万円の修理代を請求する」といったことを定めることはできません。
・損害賠償請求に関する参考判例
茨城石炭商事事件(最高裁S51.07.08第一小法廷判決)
【概要】
石油等の輸送、販売を業とする会社の従業員がタンクローリーの運転中、前方不注意により前の車に追突し双方の車を破損させた事件。
会社は経費削減のため、車両に対物賠償責任保険と車両保険に加入していなかった。
会社は、従業員にこれらの修理代の「全額」を請求。
【解説】
従業員が起こした事故の損害額について、会社が従業員に全額請求しても問題ないか?についてが話題となった事件です。
従業員を雇い営利活動に従事させている状況で、その従業員が起こした事故の責任を全て無条件で負わせるのは信義則に反するとされ、請求額の4分の1のみが認められました。
なお、賠償の程度については以下の事柄に照らし、損害の公正な分担という見地から決まるとされ、今回の判例の“4分の1”という基準がすべての案件に当てはまるものではありません。
「その事業の性格、規模、施設の状況、従業員の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散について使用者の配慮の程度、その他諸般の事情」
・労働基準法第16条に違反した場合の罰則は?
労働基準法第16条に違反した場合の罰則は、同第119条に規定されていて、6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。
労働者保護の観点からも法令を遵守するようにしましょう。
・罰金はダメだが、懲戒処分としての減給は可能
「賠償予定の禁止」により罰金制度は違法となりますが、懲戒による減給をすることは可能です。
たとえば遅刻が多い従業員に対して、遅刻している時間分の控除はもちろんのことですが、遅刻という行為に対し懲戒処分としての減給は可能となります。
しかし、懲戒処分としての減給をするには就業規則で規定しておかなければなりません。
詳しくはコチラ
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いかがでしたでしょうか。
既に罰金ルールが存在していた場合もそうでなくても、一度就業規則を見直す良い機会かもしれません。
ぜひこの機会に社会保険労務士法人Aimパートナーズまでご連絡ください。